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真っ白なあなた

昨日までと何も変わらないこの部屋で、唯一あなただけが足りない。
景色も色も香りも気配も。全てを残したまま、あなたは何処へ行ってしまったの?

知らない人が沢山来たわ。私とあなたの愛の巣に。
断りもなく踏み込んで、あなたに沢山触れた。
あなたは抵抗しなかった。何故?
あの人たちは、私からあなたを、あなたから私を奪うためにやってきたのに、
どうして受け入れてしまったの?

白い服を着せられたあなたは、とても小さく見えた。
今にも崩れてしまいそうで、触れることが出来なかった。
あんなに愛した肌なのに、その唇にさえ、触れることが出来なかった。

沢山の花に囲まれたあなた。沢山の言葉に包まれたあなた。
まるで夢でも見ているように美しかった。
あなたを本当に愛していた。あなたがいたから私は笑えた。
だから今も、私は笑う。あなたはこんなにもそばにいてくれるもの。
どれだけの涙が溢れようと、あなたがそばにいてくれるだけで、私は世界一幸せなの。

なのにどうしてあなたを奪うの?
石の部屋に入れられたあなた。耳障りな悲鳴が聞こえる。
耳を塞いでも消えない声。煩い、煩い。あなたはまだ此処にいる。
私は泣いてなんかいない。煩い、煩い、煩い…


出てきたあなたは、百合の花よりも汚れのない白だった。


触れれば砕けるその白は、小さな小さな欠片となって、私の腕の中にいる。
誰にも渡したくなかったあなたを、今独り占めしている。

あなたは私の腕の中にいる。
なのにどうして暖かくないの? どうしてこんなに軽いの?

小さなあなた。真っ白なあなた。音のない、あなた…


どうして私をおいていくの
さみしがったのはあなただったのに
どうして私をひとりにするの

どうしてひとりでいくの
つれていくとやくそくしてくれなかったの
私につよくなれというの? ひとりであるけというの?

ばかいわないで。あなたがいなきゃわらえないのよ。
このまま私はひからびて、あなたにあわせるかおすらなくすの

それでいいの? それがいいの?
答えてちょうだい。応えてちょうだい。


お願いだから、その手で私を連れ去って…

管理人朗読所要時間:4分
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